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第4話 しあわせの風見鶏

水瀬川船長の航海日記
第4話 しあわせの風見鶏



「しあわせの風見鶏」

ジェノヴァに本拠を構えるっていう、その商会をラウラちゃんは教えてくれた。

やっぱりラウラちゃんには悪いんだけど、このとき何を話したか全く覚えてない。
そういえばこの娘とこれまで何を話してきたか、記憶には全く残ってないや。面白くて変わったいい娘なんだけどね。キャラが立ちすぎてると、逆に忘れちゃうのかもしれない。

恩人に対してひどいことをサラッと書いたけど、話を戻そう。

「そういう商会があるんだ?」

私はラウラちゃんについて行って、ジェノヴァまで行ってみた。
ジェノヴァはすごく大きな都会の街だった。立派な港の前には造船所。広場には教会、交易所に銀行が軒を連ねていて、奥には著名人の豪邸や、ギルドの建物がそびえたっている。何よりも目を引くのが、商館管理局の存在。ラウラちゃんは言う。

「大きな街にしかないんだよ」

セビリアやリスボンっていう本拠地港以外で見たのはジェノヴァがはじめてかも。

「こっちこっち。あ、イニさーん」

ラウラちゃんに手を引かれてジェノヴァの街中を回っていると、イニエスタっていう男性を紹介された。穏やかで優しそうな好青年で、落ち着いた物腰で笑顔を向けてくれた。

「や。はじめまして」
「イニさんはね、しあわせの風見鶏の商会長さんなんだよ」

私もはじめまして、って自然と会釈してた。いろいろおしゃべりをしてたけど、ふと、小さな女の子がバタバタと走りこんできた。

「イニさん、イニさん、聞きましたよぉ。お船が出来上がったんですって」
「や、ユーリスさん。これが船の権利書。もうドックに入れてあるから、それもってけば船がもらえるよ」
「うわああ、ありがとうございます」

ユーリスさんっていう小さな女の子は権利書を受け取ると、両手を空高くつきあげてぐるぐる回転してたんだ。それからありがとうございますって何回か言いながらスタスタと港か造船所の方へ走って行って、少しして泣きながら戻ってきた。

「イニさぁーん。権利書、盗まれちゃいました」
「あらら」

とはイニさん。続いて声を上げたのは、ラウラちゃん。

「あらあら、何やってんのかしら、このおチビちゃんは」
「ラウラさんひどいよぉー。うわあーん」
「ほら、泣いてないで犯人の特徴教えなさい」
「ちょび髭の緑のポンチョ着た太ったおじさんです」
「それだけ聞けば十分。あとは任せて」

ラウラちゃんは走ってどこかへ行ってしまった。イニさんとユーリスさんと三人でどうしようかって話し合ってると、遠くから口笛の音が聞こえたんだ。イニさんが耳を澄ませながら、

「ラウラさんからの合図だの。僕らも行ってみようか」
「は、はい」

私たち三人は口笛のする方へ走っていくと、また違う方から口笛が鳴って、また走って行って口笛が鳴って、やがて袋小路へ走りこんだ。そこには、

「ちくしょう」
「あ、あいつです。あのおじさんが私から権利書盗っていったんです」

って、ユーリスさんは喜々としておじさんを指さして言った。ラウラちゃんはおじさんにすごんでみせる。

「さあ、もう後がないわよ。観念して大人しくお縄につくのね!」
「くそう、もうここまでか。さあ、役人に突き出すなり煮るなり焼くなり好きにしろい。ちくしょう、海賊にさえ、海賊に俺の船さえ沈められやしなければ。ちくしょう」

イニさんが一歩前に出た。

「おじさん、その船は・・・あなたに差し上げます」
「な、なんだって」
「同じ航海者として船を海賊に沈められるのは他人事ではありません。その船で商売をして、お金ができたら船の代金を支払っていただければ結構です」
「旦那・・・ありがとうございます。このご恩は決して忘れません、必ず、お代は返しにまいります」

おじさんは泣きながら立ち去って行ったんだ。かっこいいねー、とはラウラちゃん。

「でもさ、イニさん。本当に船上げちゃってよかったの?」
「仕方ないぬ。でも船がなくなったら商売もできない。航海者としてそれは絶対に避けたいことだからね。ユーリスさん、船はもう一隻作ってあげる。これから作ってくるから、もう少し待ってくれるかい」
「は、はい」

でもこの展開って・・・、って思ってたらラウラちゃんが言った。

「イニさん、これなんてアルヴェロ?」
「うん、僕もそう思った」
「あはは」

みんな声をあげて笑った。

直感が働いたんだ。この人たちとなら楽しくやっていける。
ううん、一緒にやっていきたいって。私はみんなの前に一歩出ると、

「入会させてください。お邪魔じゃなければ、ぜひよろしくお願いします」
「もちろんだとも、こちらこそよろしくね。かのかさん」

ユーリスさんはわぁって喜ぶし、ラウラちゃんはようこそって笑顔を見せてくれた。
こうして私は、しあわせの風見鶏の一員になったんだ。



目次
前回 第3話 イスパニアの春風っていうか暴風雨
次回 第5話 初めての中距離交易
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コメント

No title

(゚Д゚)私の船ぇぇぇぇええええええ

コメント返し

ゆーたんの船は迷子にまりましたとさ。ちゃんちゃん♪

おほほ

私は箸より重たいモノ持った事ないわよ♪

失礼なかのかちゃん☆〜(ゝ。∂)

ラウラちゃんへ

像より重たい箸ですね。
そりゃー、鍛えられて・・・

げふげふ (/ω\)

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